1.録音で大切なこと

 録音で大切なことは、次の3点です。
・録音レベルを適切に(カセットは0dB、シグツナDAR2は-6dB、DAR3は-3dB)
・周囲のノイズを録音しない(マスキング効果を利用)
・ポップ・ブローなどノイズを入れない(角度を45度に)

 録音レベルを正確に調整してから録音をします。音声はレベルに大小がありますから、一番振幅の大きくなったところで録音レベルを合わせます。アナログ録音なら「-3dB」程度、パソコンの録音ならば「-6dB」を中心に合わせるとよいでしょう。とくにデジタル録音では「0dB」を超えると波形が記録されませんから、「バシッ!」というクリップになってしまいます。十分に調整をしましょう。

 車の音や虫の声など背景のノイズも困ったものです。家庭で録音するときは、マイクを近くにセットして「マスキング効果」を使った録音をするとよいでしょう。ただ、マイクが近いと声に「ふくらみ」が出てしまいます(低音が強くなる)。音質補正も考えましょう。

 マイクが近いと「ポップ、ブロー」がマイクから入ってしまいます。息が直接マイクのスクリーンに当たらないよう、横45度の角度から口と鼻の中間をねらうといいでしょう。操作音、ページを繰る音などにも注意をしてください。

2.シグツナDARを使う

 デイジーの仕様2.0によって作られた録音・編集ソフトに「シグツナDAR3」と言われるものがあります。このソフトは、日本障害者リハビリテーション協会が開発したソフトで、非営利団体に提供される無料のソフトです。申請をすれば使用ライセンスが交付されます。詳しくは以下のURLにアクセスしてください。
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/

3.パソコンのスペック(仕様)

 シグツナDAR(Digital Audio Recorder)を使うためのパソコンはどんなものがいいか、ご紹介します。

 ウインドウズが使われるようになってパソコンの性能が随分あがりました。とくに最近は低価格化・高性能化が顕著です。二、三ヶ月するとパソコン市場が変わってしまいますので表を掲載しにくいのですが、目安にしてください。

・パソコンはDOS/V機(IBM互換機)
・CPU(中央演算装置)   ペンティアムⅢ 1GHz以上
・DRAM(メモリ)   256MB以上
・HDD(ハードディスク) 20GB以上(20GB推奨)
・OS   WinNT4.0、2000professional

 そしてサウンドカードの良いものを選んでください。パソコンに詳しい人に相談してみてください。

4.DAISYの特徴

 この仕様の録音ソフトの特徴は、音声を自動的にフレーズに分けて記録することにあります。普通の録音ソフトは一本の波形ファイルですが、シグツナDARでは見出し単位に波形ファイルが分かれ、さらに細かくフレーズの情報も記憶されます。そのため、原稿の文字列に対応させて、音声をワープロのように移動・コピー・カット&ペーストなどの編集をすることができます。およそ、ワープロでできる編集の働きが、音声についてできると考えていいでしょう。さらに、細かくフレーズを分割したり結合したりできるようにもなっています。

 次のシグツナDAR3では、マルチメディア化されています。録音された音声のフレーズ単位にテキストをシンクロさせることができます。この画面には絵・グラフ・写真などを貼り付けることができ、絵や写真を見ながら音声で説明を聞くことができます。これもインターネットの標準技術SMIL(Synchronized Multi-Media Integration Language)が使われているからです。今後もどんどん進化していくことでしょう。マイクロソフトもこの標準技術を使っています。詳しくは、それぞれの操作マニュアルをご覧ください。

5.デジタルにすると

 音楽用CDやMDはデジタル技術を使ったいわばアナログです。パソコン上で再度、別の形に編集することができません。(一旦、アナログ信号に変えて取込み直せば別ですが……)シグツナDARのデータのようにパソコンに取込んだデータは、利用に合わせていろいろなデータに加工することが可能です。先に、テキストとのシンクロのお話しをしました。インターネット上のファイルにすることもできます。これによって、どの家庭にもある電話からインターネットにアクセスすることも可能になります。

 マルチメディアデータをパソコンで再生する。パソコンのない人はゲーム機とテレビで、音声だけを聞く人は専用のCDプレーヤーで、プレーヤーを持たない人はプッシュホン電話で音声を検索して聞くことができます。この電話はインターネットを介して世界中の音声サイトにつなぐことができます。

 このように、デジタル化は今までできなかったことを可能にしてくれます。これらの技術を私たちのものとして、プリントハンディキャップの人たちにどう役立てるかが、いま問われています。

6.録音レベルに気をつけよう

 さて、話しは後戻りして、カセットの話しになります。デジタルにすると、音声情報を利用する人にとっては非常に便利になります。ですから、この動きは政府の補正予算の投入に始まり今後もっと加速することでしょう。

 そこでカセットです。カセットは録音の「おもちゃ」です。正直言ってあまり音質にすぐれていません。ですから、シグツナ編集をした人たちが困っているのです。カセットでは……

・テープヒスが目立ちすぎる
・ワウ(回転ムラ、右の図)がある
・傷がつきやすく音とびがある

などの点が、欠点としてあげられています。ですから、カセットテープで録音するときには、録音レベルに気をつけましょう。ピークレベルメーターの最大振幅は「0dB」になるようにしましょう。また、ワウ対策として、週に1度はピンチローラーのクリーニングをしましょう。方法は全国視覚障害者情報提供施設協会「活動するあなあたに 録音編」を参照してください。また、3年に1度は消耗部品(ピンチローラー、キャプスタンベルトなど)を交換してください。「動いていれば」「聞こえるから」では使える録音になりません。

7.モーター音

 カセットの家庭録音に多いのがモーター音。対策のやっかいな音です。テープヒスと同じようにシグツナの無音検出に重大な影響を与えます。この音は、カセットデッキとマイクスタンドを同じテーブルに置いたりしていると混入して録音されてしまいます。マイクの位置が「デッキの上に載せるとちょうどいい」といって、不充分なクッションの上にマイクスタンドを載せている人もいます。ほとんどのカセットデッキがモーターを2個以上持っていますから、デッキは振動の巣です。テーブルは別にして、くれぐれもマイクスタンドをデッキの上に置くようなことはしないでください。

8.バ  ズ

 バズの代表的な発生源が蛍光灯です。中に「小さな雷」を持っていると考えてください(パソコンもノイズの塊です)。蛍光灯のノイズのように電気的なノイズをバズと呼んでいます。このノイズも対策がやっかいで、デッキのメーカーに相談しても解決法が見つからないこともあります。高い周波数のバズは、多くがマイクのコイルによる誘発が原因のことが多く、知識のある人に相談するとよいでしょう。解決法の一つとして、「蛍光灯は使わない」「電源コードの極性を変える(プラブを左右入れかえる)、などの対策でいい結果が得られるかもしれません。

 低周波のバズは、マイクのコード(雑音が入りこまないようシールドをしてある構造)のシールド側が断線しかかっていたり、マイクジャックが汚れていて接続が不完全であったりすることが原因になります。コードを動かしてノイズが出るか試してみたり、ジャックの表面を乾いた布で磨いたりして、その原因を探る必要があります。

 環境や使っている機器によって対策がかわりますから、知識を持っている人(仲間のオーディオマニア、パソコンマニアなど)に相談をしてみてください。